五輪見据え「乗り遅れるな」 都内に出店ラッシュの自治体アンテナショップ、採算厳しい中でメリットは? – 産経ニュース



2017.8.11 10:00
【日本の議論】
五輪見据え「乗り遅れるな」 都内に出店ラッシュの自治体アンテナショップ、採算厳しい中でメリットは?

東京へアンテナショップを出店する自治体が増えている。8年間でその数は倍近くになり、特に都心部の日本橋などでは“激戦区”の様相に。2020年の東京五輪を見据え、都内での情報発信が観光誘客に有効と考える自治体も多く、近年は地元食材を提供するレストランを併設するなど内容も多様化している。ただ、一等地への出店は採算を取るのが難しく、専門家は「自治体にどんな利益があるのか、長期的な視点で考える必要がある」と指摘する。(江森梓)

商談のきっかけに…

平日の昼下がり、東京・日本橋にある長崎県のアンテナショップ「日本橋 長崎館」。カステラや地酒などの定番から、ちゃんぽん味のせんべいや皿うどん入りチョコレートなどの変わり種まで所狭しと並び、品定めをする人たちでにぎわっていた。

地元食材を使った料理を提供するカフェも併設され、仕事の合間に訪れて舌鼓を打つ人も。埼玉県川口市の会社員、岸本巧さん(49)は「ふだん買えないような珍しいものを買えるので、昼飯がてらよく利用します」と話す。

長崎県は平成28年3月に同店をオープン。県外では流通の少ない特産品を置くことで商談のきっかけになることもあるといい、物販イベントを開き試食や試飲などのアンケートで消費者の反応を見ることもある。

レストランにインバウンド対応も

一般財団法人「地域活性化センター」によると、東京都内の自治体のアンテナショップは年々増えており、20年度に36店だったのが28年度は65店まで増加。出店ラッシュが続いている。

近年は店舗面積の広い大型店舗が増え、レストランを併設したり、自治体のPRイベントを開催したりするなど内容も多様化。外国語パンフレットを置いたり、無料Wi-Fiを整備したりする店舗も増えており、同センターの担当者は「東京五輪を見据え、国内外から観光客が多く訪れる東京がPRの拠点として有効と考える自治体が多いようだ」と話す。

中でも日本橋は長崎県のほか、福島県や三重県、奈良県、富山県、山口県など多くの自治体が出店する激戦区。滋賀県も今年10月に出店を予定しており、物販のほかに移住情報の提供や伝統工芸が体験できるワークショップも行う。県の担当者は「首都圏ではまだまだ認知度の低い滋賀県の情報発信拠点にしていきたい」と意気込む。

経営は厳しい?!

ただ、都内の一等地とあって賃料はかさみ、経営は必ずしも順調というわけではないようだ。同センターの調べでは、27年度の売り上げは北海道の「北海道どさんこプラザ」が10億円を突破する一方で、3千万円未満の店舗も13店(24・1%)あった。民間経営の店舗と同様、人気、不人気の差がはっきりと出つつある。

長崎県の担当者は「単純な採算ベースではなかなか厳しい。ほとんどのアンテナショップは採算がとれていないのではないか」と明かす。大阪府の場合は物産品を扱う民間企業のアンテナショップがすでにあり「あえて自治体が独自に出店する必要はない」(同府東京事務所)とするなど、自治体間でも温度差があるようだ。

京都大大学院経済学研究科の岡田知弘教授(地域経済学)は「アンテナショップは地域経済を担っている生産者を東京の消費者とつなぐ役割があり、必ずしも採算性だけを見るものではない」とする一方で、「自治体として公益性を考え、ものを売って終わりにするのではなく、消費者の反応を生産者らにきちんとフィードバックし、運営を改善していく必要はある」と話す。

商売とは縁遠いイメージのある自治体。出店ラッシュのあとには、厳しい現実を突きつけられる自治体も増えそうだ。

自治体のアンテナショップ 自治体が特産品などを販売するために東京などに構える店舗。単なる物産販売所ではなく、観光や歴史文化など地域の情報を発信している。運営の形態は民間やNPOなどに委託したり、自治体単独で行ったりとさまざま。熊本県のアンテナショップ「銀座熊本館」は熊本地震の被災地を応援しようと多くの人が詰めかけ、話題になった。




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