バス停の愛称が“駅”? 住民らを訪ね理由探る – 神戸新聞



 「地元の人たちは、あのバス停を昔から『駅』って呼ぶんやで」

 兵庫県養父市関宮にある全但バス「関宮」バス停。その面白い愛称を、知人が教えてくれた。最も近い鉄道駅は、15キロ近く離れたJR八鹿駅。なぜそんな呼び方をするのか。長年暮らす地元住民らを訪ね、理由を探った。(那谷享平)

 関宮バス停は、市内を東西に走る国道9号線沿いにある。停車位置を知らせる看板があり、その横に、トイレと待合室を備えたこぎれいな小屋が建つ。元々ここにあった全但バスの出張所が廃止され、跡地に旧関宮町が整備した建物だという。待合室に入ると、壁に「中心市街地(ちいさな道の駅)整備事業」と書かれた、旧関宮町時代に作られたプラスチックの札が。

 おお、この事業名が「駅」と呼ばれる由来か、と思ったがそうではなかった。神戸新聞の記事を見ると、小屋が建ったのは2003年。しかし周辺住民に聞くと、中高年を中心に「ずっと昔から駅と呼んでいる」との声が返ってきた。

 「初めて聞いた時は『駅なんてないのに?』と思った」。そう振り返るのは、同市関宮に暮らす福井勝子さん(73)。1970年、結婚を機に朝来市山東町から関宮に移り住んだという。「今でこそ私も『駅』と呼ぶけど、最初は夫に『駅が-』と言われても変な感じでした」

 70代の福井さんでも理由を知らなかった。ではさらに上の世代ならご存じなのでは-。福井さんに声を掛けてもらい、同地区の70~80代の男女8人に集まってもらった。皆が「まあ昔の話やでなぁ」と口をそろえる中、関宮郵便局の局員だった藤川政美さん(82)が思い出したように語る。

 「全但バスが旧国道を走っていた頃、常設の切符売り場があった。近くの寺の住職が常駐し、『駅長さん』と呼ばれていた…」

 旧関宮町教委発行の「関宮町史資料集第6巻」などによると、現在の国道9号が1965年ごろに開通する以前は、北側を通る道が国道だった。藤川さんの話は旧国道時代なので、駅の愛称は少なくとも半世紀以上前から、ということになる。旧国道の切符売り場では、鉄道の切符も買えたといい、それが愛称の由来となったのではないだろうか。

 8人の話題は、いつしか思い出話に。「住職はええぼんさんやったなぁ」「昔の木炭バスはよう故障して」。あっという間に約1時間が過ぎた。最後に藤川さんが一言。「皆さん、これを機会にまた集まりましょうや」

 昔ながらの身近な近所づきあい。「駅」という愛称が半世紀以上も語り継がれる理由が、少し分かったような気がした。




こんな記事もよく読まれています



コメントを残す