「政教連携恐れず」、伊勢市や神社本庁が観光で議論 – 日本経済新聞



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 国内で20万に達するともいわれる神社仏閣を観光資源としてどう活用し、その魅力を外国人観光客にどう伝えるか。都内で2017年7月21日まで開催された「インバウンド・ジャパン 2017」(主催:日経BP社)では、「神社仏閣インバウンドの未来 ~伊勢市モデルの可能性」と題したパネルディスカッションが最終日に開かれ、伊勢市や神社本庁などのキーパーソンがパネリストとして登壇した。

 パネリストの間で意見が一致したのは、地域にある神社仏閣がそれぞれ持っている物語性こそが最大の観光資源であり、その魅力を発信するために自治体と宗教法人が連携する「政教連携」の重要性だ。パネリストとして登壇した伊勢市役所産業観光部の須崎充博氏が「市町村などの自治体は政教分離の原則を過度に恐れず、観光客の目線で必要なことは何かを考えて取り組むべき」と語れば、神社本庁教化広報部広報国際課の岩橋克二氏も「夏祭りや初詣でなど、多くの日本人にとって神社は宗教というよりも、精神に結び付いた伝統文化の場だ」として、伝統文化を伝えるという趣旨での「政教連携」が必要だと同調した

伊勢市役所産業観光部の須崎充博氏
(撮影:清野 泰弘、以下同じ)
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伊勢市役所産業観光部の須崎充博氏
(撮影:清野 泰弘、以下同じ)

神社本庁教化広報部広報国際課の岩橋克二氏
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神社本庁教化広報部広報国際課の岩橋克二氏

■1300年前の儀式を今体験できる価値

 伊勢市の須崎氏は、伊勢神宮を中心に据えた情報発信の取り組みなどを「伊勢モデル」として紹介した。代表的な取り組みが、神社の施設の作りや儀式の由来などの物語を海外の人の目線から捉え直し、分かりやすく伝えることだ。

 例えば、伊勢神宮で最も重要な祭事とされる神嘗祭(にいなめさい)は、その年に収穫された新米を最初に天照大御神に捧げるという意味を持つ。須崎氏によれば、日本人がどのように米を主食にしたのかの歴史的経緯を反映しているという。

 また伊勢神宮の内宮にある宇治橋は、冬至にあたる11月下旬~1月下旬ごろ、橋に掛かる大鳥居の方角から朝日が昇る。また夏至のころは伊勢神宮に近い海岸で信仰の対象になっている夫婦岩の方角に夕日が沈むように見える。どちらも伊勢神宮にまつわる太陽信仰だと考えられる。

 須崎氏は伊勢市が動画配信サイト「YouTube」で配信した伊勢神宮を紹介する動画を上映。4分強の動画では、施設を写すだけでなく、こうした神社にまつわる物語をナレーションやセリフなしの映像だけで表現している。「180万回再生され、3割が動画を最後まで視聴した」(須崎氏)

 須崎氏は「どの地域にある神社仏閣もこうした物語性を持っている」として、これを分かりやすく伝えることが重要だと訴えた。

 続いて講演した神社本庁の岩橋氏は、伊勢市との協力関係を挙げながら、政教連携することの重要性を説いた。例えば、伊勢市が投稿している動画は伊勢神宮の協力で素材提供を受け、伊勢市が構成・編集したうえで「伊勢神宮公式チャンネル」を設けて投稿している。

 神社本庁は伊勢市から相談を受け、海外への情報発信などでも協力関係にあるという。「政教分離の観点から大丈夫なのか、という懸念もたくさんもらった」(岩橋氏)。しかし観光客の誘致策や情報発信については、政治が特定の宗教団体を支援すると捉えるのでなく、日本文化を伝える活動と捉えるべきだとした。

 例えば岩橋氏ら神社本庁が海外で神道を説明する際には「religion(宗教)」などの言葉を使わず、「Japanese faith(日本人の祈り・信仰)」と表現しているという。「夏祭りや七五三、初詣などを宗教行事と認識していない日本人が多い。宗教である以前に、日本人の精神的な伝統文化だと理解したほうがよい」(岩橋氏)からだ。

 日経BP社社会インフラ研究所プロデューサーの高津尚悟も交えたパネルディスカッションでも神道の捉え方や政教連携の重要性が再び議論に上った。例えば、福岡県宗像市の沖ノ島が世界遺産に登録されるまでのUNESCO(国際連合教育科学文化機関)での議論では、「神道の自然崇拝の考え方などが注目を浴び、『アフリカの大使からはアニミズム(すべてのものに霊が宿っているという考え方)も認められるのかと、自信になった』という反応もあった」(高津氏)。

 高津氏は「観光や文化遺産保護の観点で政教連携することは海外では当たり前だ。周りは気にしていないと思う」として、市町村が地域の神社仏閣について情報発信に取り組むべきだと訴えた。

(日経コンピュータ 玄忠雄)

[ITpro 2017年7月24日掲載]




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