中家徹JA全中会長インタビュー 自己改革で新たな協同組合づくり – 農業協同組合新聞



 8月に就任したJA全中の中家徹会長はJA自己改革の完遂を強調し、それによって各JAが組合員を基盤とする組織としての原点に立ち返ることが重要だと強調する。組合員組織を基盤としたJAが地域振興に取り組むとともに、食料、農業、農村の重要性を広く国民に発信していくことが農政を変えることにもなる。農協改革を乗り越えてJAが明日へどう挑戦すべきか。聞き手はJA水戸の八木岡努代表理事組合長にお願いした。

 --JAは戦後の食糧不足期から高度成長期まで日本農業を支え、また地域社会を支えてきたと思います。われわれは自己改革を実践し組合員に評価されるJAになることが大事ではありますが、JAの使命とはもっと広く国民の食料生産を担うことであり、そのなかで農業者一人ひとりも心意気と使命感で仕事をしていると思います。
 そこで最初に、JA全中会長に就任されて改めてJA、JAグループの機能と今後、果たすべき役割についてのお考えと会長としての抱負をお聞かせください。

 

 時代の流れはありますが、JAの基本は農業振興であり国民の食を守っているということだと思います。われわれJAは全身全霊をかけて農業振興に取り組んできたわけで、今はまさにJAが果たすべき役割が大きくなっていると思っています。
 われわれの基本に、食と農を基軸として地域に根ざした協同組合という考え方があります。それに基づくと産業としての農業だけではなく地域をどう守るか、農村をどう守り、どう発展させるか、今言われている地方創生についてもJAの果たす役割は非常に大きいと思っています。
 だから、われわれは自己改革に取り組んでいるわけでこれを完遂させることが当面の使命だと思います。担い手をはじめ組合員のみなさんからやはりJAは必要な組織だという評価をいただくこと、これがもっとも重要だと思います。

clos1710130901.jpg(写真)中家徹・JA全中会長(左)と八木岡努・JA水戸組合長

 --自己改革はこれからの2年が集中期間だと位置づけて取り組んでいます。しかし、取り組みはそれぞれ地域で違いが出てくるのではないかと思います。自己改革の多様性ということについてどうお考えですか。

 

八木岡努・JA水戸組合長

 前回の大会で農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化という大枠の目標を掲げています。これはこれで重要ですが、具体的にどうするのかとなると、日本の農業は作物も多く、JAにも大規模から小さいJA、あるいは都市地帯もあれば山村地帯もある。非常に多様です。ですからこのかたちにしましょうと画一的なパッケージではできない。すべては各JAの実態に合ったかたちで、組合員にとっていちばんいい方法として考えていくことが課題です。
 7月に農水省が農協改革について、認定農業者とJAに同じ質問を投げかけた回答結果が公表されました。そこに私は2つの格差を感じました。 1つはいわゆる改革の進捗状況の格差。これはJA間、あるいは都道府県間です。思ったよりあるなという感じを受けましたから少し遅れている地域の取り組みを加速化しなければいけません。
 もうひとつはJAと認定農業者の回答の格差です。販売事業改革や生産資材価格引き下げに取り組んでいるということについて、JAは全国で8割方はやっているという回答でした。一方、認定農業者は3割でした。この5割の格差は何かということです。
 結局、JAは自己改革に取り組んでいるが、それがなかなか組合員の皆さんに伝わっていないという現状にあるということでしょう。だから、自己改革に取り組んでいることをどう組合員のみなさんに理解していただくか、ここが非常に大事で、ひとつは日々の組合員との接点、対話です。それから広報誌で自己改革の内容を知らしめるなどの方法も考えられます。
 そして、もっとも大事なことは最前線の職員まで含めて、われわれのJAの自己改革はこれをやりますということについて、共通認識を持ち、組合員との接点の場面で職員から話題にして提供することだと思います。ともかくスピード感を持って取り組んでいかなければなりません。

(写真)八木岡努・JA水戸組合長

 --現場では自己改革といってもそれはJAを守るためではないかということも言われます。もちろんそうではなく、改革を完遂した先の明るいビジョンを組合員に示すことや、JAは食料の安定供給の役割をしっかり果たしていくんだといった旗印を掲げることも大事だと思います。

 

中家徹・JA全中会長 JAは組織基盤の存在がいちばんの強みです。しかし、ここが非常に弱くなっているのが現実で、そこを強めるには、やはりJAそのものを魅力あるものにしていかなければなりません。その魅力は人材だと思います。
 これは職員の資質ということですが、組合員との接点でホスピタリティをきちんと持つことが重要です。一般の企業と人材で差別化を、と私は言ってきましたが、つねに組合員から、○○さんがいるからJAを利用するんだ、と言われる人材づくりが求められるています。
 かつてはJAの職員は他の企業のような社員ではなく、協同組合の運動者だと言われていました。これがだんだん死語になってきましたが、運動者とは何かという原点に返り、職員もそのことを考え組合員に訴えて、組合員が協同組合とはそういうものなのかと理解するかたちにならなければいけないと思います。
 たとえば、JAも事業利用で手数料はもらいますが、その手数料は一般企業へ払う手数料とは使い方が違います。JAが受け取った手数料は、結局は地域で組合員に還元されることになります。そうしたことを組合員と機会あるごとに話をすることによってJA全体を魅力あるものにし、求心力と結集力を高めていく。自己改革をやり遂げるとは、最終的に組合員から高い評価を受け、やはりJAは必要なんだという意識になってもらうことです。
 そうなったときに協同組合の原点にまた戻って、本来の、いわゆる組合員組織に基づく協同組合らしさをもったJAが生まれてくるのではないかと思っています。この2年、みな必死になってやり遂げれば、明るい協同組合としてまたスタートできるという思いを持っています。

(写真)中家徹・JA全中会長

 --そういう意味では全中や県中に人づくりの核をぜひつくっていただきたいと思います。

 

 教育というものは大変だけれども先行投資でもあり、怠ってはならないと思っています。
 われわれの事業は組織という基盤があってはじめて成り立つものです。だから、私はもう一度、土づくりをやろうと言っています。有機肥料を与えて良い土を作っていこうと。遅効性ではあるが有機肥料をやって良い組織基盤を作ることが重要であり、良い土壌ができれば良い木が育ち、良い実を収穫することができます。しかし、今まではあまり土づくりをしないで化学肥料をやり続け目の前のものを穫ろうということばかりやったから、土が弱くなってしまったというのがJA組織の現状ではないでしょうか。自己改革もそのことを視野に入れる必要があると思います。

 --われわれが自己改革に取り組んでいくなかで、やはり農政の問題が大きいと思います。TPPなど貿易交渉や農政改革では主要種子法廃止問題などさまざまありますが、JAグループとしてどう対応しようとお考えでしょうか。

 

 農政課題は山積しており、これに対して個々に是々非々で対応していかなければなりません。ただ、とくに大事だと感じているのは世論です。振り返ると、なかなか農業やJAについて国民に十分に理解されていないと思います。われわれJAグループはたとえば過疎地の活性化も含めてさまざまな実践をしていますが、それがなかなか認知されていません。あるいは食料自給率もこの低さでいいのかということについて考えられていません。
 こうしたことを都市部の方々や一般消費者のみなさんにもしっかりお伝えし、農業は必要で大事だということを理解してもらうことが農政活動を前に進める大きな力になると思います。
 先日、スイスが食料安保を憲法に明記するという国民投票を可決しました。日本も食料・農業・農村基本計画のなかできちんと45%に引き上げる目標を掲げているわけです。最近、議論されませんが、食料自給率はどうするのか、生産者のためというより消費者の問題だとして議論しなければならないと思います。
 農も大切ですが、食が大きな問題です。自給率向上も生産者のためではなくて消費者のためだという思いです。そこをきちんと認識をしていただくことが農業政策にとっての基本だと思います。私は可能な限りどこにでも出かけていってこのことを訴えていきたいと思っています。

--農政改革では規制改革推進会議が震源地になってきたと思いますが、ここには反論しJAグループの立ち位置を明示すべきだと思います。

 

 たしかに農協改革ではとてつもないボールを投げられたわけですが、そこは毅然とした対応をしてきましたし、今後もそうしなければなりません。ダメなものはダメだと主張していかなくてはなりません。

 --規制緩和推進の中心メンバーの一人は、東京の人材派遣会社が入るビルで家畜を飼うなど農業を始めると言っています。話題性だけであって、地域を守る、あるいは国民の食料を提供する使命を果たそうという考えはまったくなく、成長産業化だけが踊ってしまい、本来のやるべき使命はだれが担っているのか全然議論されません。

 

 そのとおりで、産業政策が強調され、地域政策が伴っていない感があります。和歌山県はまさに中山間地で過疎化が進み、農業というよりも農村自体が疲弊してしまっています。
 先日も地元で秋の環境整備活動として水路掃除や草刈りなどをしてきましたが、ここではそこに住んでいるもともとの農家、家族農業のみなさんが環境を維持しています。株式会社が入ってきてそれをやるのか、ということです。やはり地域でそんなボランティアのかたちで国土を守っているわけです。そこを分かってもらえていない。JAグループとしても発信していかなければならないと本当に思います。

 --これからは中央会制度が廃止されますが、その後の展望についてはいかがでしょうか。

 

 一般社団法人になったとしても全中は全中として果たすべき役割はあると思います。ただ、今後は法的な裏づけはなくなるわけですから、組合員からなくてはならないJAだと評価されなければならないのと同じように、全中も会員のみなさんをはじめ広く必要とされる存在にならなければいけません。
 そのあり方について議論をしていますが、一枚岩の組織というのは非常に大事だと思います。ひとつはJA、県、全国段階というタテの流れと、各連合会と中央会間のヨコの流れを本当にスムーズにしてどこにいってもJAグループは一枚岩になっているということを示していかなければなりません。
 大事なのは何といっても現場です。各地域の現場で組合員のみなさんがJAに集う、そしてこれがJAだという意識になってもらうことが最大の課題です。そこに向かって全中が今まで以上の補完機能を果たしていくことだと思います。

--本日は力強いお話しが伺えて単協の我々も心強く感じます。ありがとうございました。


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