<軌跡 三江線の夏3>「外から目線」地域づくり – 読売新聞



 ◇川戸駅で合同ゼミ県立大生 水貝恵大さん20

 「古い時刻表や生い茂った雑草をそのまま残す方が価値がある。さらにいいアイデアが加われば、地域に人が集まると思う」

 JR三江線の川戸駅(江津市)近くの桜江総合センターで今月4日に開かれた学生約20人と住民の意見交換会。県立大総合政策学部2年の水貝恵大さん(20)が発言すると、他の学生たちもソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)による集客や空き家活用など、次々と地域づくりの方策を提案した。

 学生たちは、過疎が進む地域の課題をどう解決するかを学ぶ県立大や立教大(東京都)など3大学の合同ゼミで江津市・川戸地区を訪れていた。

 ゼミは、立教大コミュニティ福祉学部の原田晃樹教授(地方自治)が母の古里である同地区に立ち寄り、駅で旅行者のために置かれたノートに、「地域づくりで手伝えることがあれば」と連絡先を書き込んだのがきっかけだった。住民でつくる川戸地域コミュニティ協議会の大屋靖治会長(72)が「地域の将来を一緒に考えてほしい」と原田教授に手紙を送って実現。地元の県立大からも水貝さんら鉄道研究会のメンバーが参加することになった。

 江の川のほとりにある江津市桜江町の川戸地区は約600人の住民の4割以上が65歳以上だ。1930年4月に開業した切り妻屋根の木造平屋駅舎は、住民が月2回歓談に集う以外は閑散としている。

 大屋会長は「住民だけでは廃線後の活用策は前に進まなかった」と明かす。一方、水貝さんは「川戸駅はそのまま残すことに価値がある。朽ちていくことも草が伸びることも、すべてが歴史。そこに魅力を感じる人は多い」と語る。

 香川県出身の水貝さんは鉄道に乗るのが大好きな「乗り鉄」。大学進学後、廃線が議論されていた三江線に関心を持ち、交通政策に詳しい教員に「鉄道好きの学生を集めては」と促され、仲間6人で鉄道研究会を発足。部長に就任した。

 2泊3日の合同ゼミで、水貝さんら学生は三江線に乗り、市職員や住民から現状を聞き取った。夜は住民の家に招かれて酒を酌み交わし、温泉に足を延ばした。水貝さんはフィールドワークの中で、住民たちがあまり地域行事に参加していないことに気付いた。

 「行事に参加する人自身も楽しめる仕掛けができれば、活気も出るはず」。意見交換会で提案した。立教大の女子学生も「星が無数に見え、近所の人が話しかけてくれる。東京では考えられない」と都会からの視点で魅力を語った。

 水貝さんたちはゼミのリポートを住民に届ける一方、廃線までの限られた時間で、ウォーキングイベントや貸し切り臨時列車の運行などの「仕掛け」を企画する。

 水貝さんは「地元の人が仕掛けを楽しむことで、もっと力が発揮できると思う」と語り、「まずは、『外からの目』が捉えた地域の魅力に気付いてもらえれば。そうなれば、将来はきっと見えてくるはずです」と言い切った。




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