映画に演劇も 2018年期待の鉄道エンターテインメント – ニコニコニュース



 新路線の建設、存廃が心配される路線、新型車両の登場と旧型車両の引退……。新聞や雑誌、オンラインメディアでは新年に欠かせない話題だ。ならば私も……と思うけれど、手法としては各社の公式発表のまとめにすぎず、同じ内容の繰り返しになってしまう。松の内を過ぎたお節料理のような記事では本誌の読者諸兄に申し訳ない。

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 そこで趣向を変えて「鉄道をテーマとしたエンターテインメント作品」を挙げる。実は、2018年は鉄道をテーマとした作品が多い。大ヒットした映画『RAILWAYS』シリーズの3作目、鉄道ビジネス分野でベストセラーとなった書籍の映画化、列車の車内を舞台とした演劇作品の新作もある。

●『かぞくいろ』

 ――『RAILWAYS』シリーズ最新作。主演は有村架純。18年公開予定。

 鉄道映画としてはビッグタイトル。しかも旬の女優、有村架純さんの起用で期待が高まる作品だ。有村さんは13年に三陸鉄道がロケ地となったNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』で知名度を上げ、17年の『ひよっこ』で主役。年末のNHK紅白歌合戦で司会を務めた――などと、もう説明の必要がないくらいの大物だ。

 そして真の主役、鉄道路線は熊本県と鹿児島県にまたがる「肥薩おれんじ鉄道」である。九州新幹線鹿児島ルートが全通する前のJR九州、鹿児島本線。現在は地域輸送が主体のローカル鉄道だ。経営は厳しく、熊本県側が運営基金を全額取り崩して抜本的な資金対策を実施した経緯がある。しかし、いわば背水の陣で仕掛けたレストラン列車「肥薩おれんじ食堂」が話題となって、全国の観光列車のなかで存在感を堅持する。

 有村さんが演じる主人公はシングルマザーで、鉄道が好きな息子のために鉄道の運転士になるという設定だ。15年に映画『ビリギャル』で受験生だったというのに、もうお母さん役だ。シリアスなドラマだろうけれど、かわいい鉄子ママなんだろうな、と期待する。肥薩おれんじ鉄道はワンマン運転だから、運転士と乗客のふれあいも描かれるだろう。若いシングルマザーが、安全第一の堅い職場で成長していく。その姿に共感する女性も多いと思う。

 もう1人、主人公と心を通わせるシングルマザー役として鹿児島県出身の桜庭ななみさんの出演が発表されている。彼女も母親役としては若い。他に、主人公の義父でもある先輩運転士役として國村隼さんが出演する。國村さんはかつて『萌の朱雀(1997年)』で未成線の建設工事に携わった人物を演じていた。

 監督の吉田康弘さんは、2013年に江ノ島電鉄沿線を舞台とした『江ノ島プリズム』を手掛けた。江ノ電がタイムマシンとなり、福士蒼汰さん演じる主人公を過去へ戻してしまうというコメディー映画だった。鉄道現場の撮影経験があるという意味で安心だし、今回は肥薩おれんじ鉄道の魅力をどのように引き出していただけるか、期待が高まる。

 本作品は10年に中井貴一さん主演でヒットした『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』、11年の三浦友和さん主演『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』に続くシリーズ3作目。物語に連続性はないけれど、2作目の富山地方鉄道の駅で、1作目の一畑電車のパンフレットが映るという仕掛けがあった。今回はタイトルに『RAILWAYS』を冠していないから仕切り直しの意図もあったかと思うけれど、前作から続く小ネタにちょっと期待している。

●『ローカル線ガールズ ~私、故郷に帰ってきました~』

 ――ベストセラーのビジネス書を映画化。18年11月公開予定。

 福井県のえちぜん鉄道で活躍するアテンダント(女性乗務員)の活躍と成長を描く作品。原作は08年に出版された『ローカル線ガールズ』だ。本書は小説や漫画ではなく、ドキュメンタリーでありビジネス書。えちぜん鉄道がお年寄りなどへの乗客補助や観光案内をするために導入した「アテンダント」に採用された女性の目で、日常の経験とローカル線の姿、諸問題を語るという内容だった。

 08年といえば鉄道趣味が盛り上がり、あらゆる面で鉄道関連商品が誕生した。本書も鉄道×女性という組み合わせで注目され、のちに『○○ガール(ズ)』という類似本が多数生まれた。その中でも本書はローカル線問題を真摯(しんし)に語り、心温まるエピソードが印象に残った。

 映画では女性アテンダントという職業をテーマに、都会で夢に破れた女性が故郷に帰り、新たな職場で再起する姿を描くという。主演は吉本興業のタレント、横澤夏子さん。本作は吉本興業が手掛ける地域発信型映画の1つ。吉本興業はこれまでに、地域密着型映画を60本以上も協賛しているという。明るく楽しく、泣き笑いを通じて、鉄道と地域との関わりなど、何か大切なものを心に残す作品になりそうだ。

●『泳ぎすぎた夜』

 ――青森県弘前市でオールロケ、弘南鉄道が登場。18年春公開予定。

 鉄道が主な舞台ではないけれども、弘南鉄道車内や、弘南鉄道大鰐線松木平駅で撮影された映画だ。弘南鉄道の公式サイトで先行上映会の告知があった。青森県日仏協会創立30周年記念事業として制作された。その趣旨に沿うように、監督は日本の五十嵐耕平さん、フランスのダミアン・マニヴェルさんが共同で手掛けた。1月27日に弘前大学で特別先行上映会が開催される。春から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムなどで全国公開される。

 6歳の少年が魚市場で働く父に絵を届けるという物語。ネットで公開されている予告編では、雪深い道を歩き、1人で電車に乗る姿が描かれている。小学校1年生が通学路を離れるという大冒険。初めてのおつかいを連想するけれど、どんな展開になるのだろう。すでに完成しており、第74回ヴェネツィア国際映画祭・オリゾンティ(革新的、かつ斬新な作品)部門に出品されたほか、第18回東京フィルメックスでは学生審査員賞を受賞している。

 鉄道が主役とはいえなくても、こうした映画作品に登場し、観光人気が盛り上がる事例は多い。08年の中国映画『狙った恋の落とし方。』がきっかけで、JR釧網本線北浜駅に大勢の中国人観光客が訪れているし、16年のアニメ映画『君の名は。』に登場する駅に似ているとして、秋田内陸縦貫鉄道が聖地巡礼の対象になった。11年の『ハナばあちゃん!! ~わたしのヤマのカミサマ~』の撮影で使われた小坂鉄道廃線跡のレールバイクは、その後に観光施設として正式にサービスを開始している。

 『泳ぎすぎた夜』で、弘南鉄道が盛り上がるかもしれない。

●『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』

 ――『銀河鉄道999』40周年記念で舞台化。18年6月に東京公演、7月に北九州・大阪公演。

 アニメの世代である鉄道ファンには説明不要なコンテンツ。松本零士さん原作の漫画は1977年に週刊少年キングで連載開始。翌年からテレビシリーズ化。その翌年に劇場版が公開された。また、舞台作品としては松竹歌劇団によるミュージカル作品などがある。2017年は漫画連載開始から40年。18年はアニメ化から40年。今作はこの40周年を記念した舞台化作品となる。

 原作・総監修を松本零士さん自身が担当する。物語は劇場版第1作をアレンジしたという。生命体も含めてあらゆるものが機械化された時代に、生身の人間の少年、鉄郎が謎の美女メーテルとともに銀河鉄道で旅に出る。目的地は機械の身体をタダでくれる星。鉄郎役はミュージカル界のトップスター中川晃教さん。メーテル役はミュージシャンであり舞台女優でもあるハルカさん。他のキャストも音楽、舞台経験者の精鋭を集めた。

 ガラスのクレア役の美山加恋さんは、どんな衣装になるだろう。物語だけではなく、舞台演出や衣装も気になる。演劇通をうならせる仕掛けがありそうだ。

●『銚電スリーナイン ~Return to the Roots~』

 ――シアターキューブリックのローカル線演劇が再び! 18年7月中旬~下旬公演。

 同じスリーナインでも、シアターキューブリックのスリーナインといえば、同劇団が手掛ける「ローカル線演劇」のシリーズ名だ。鉄道を舞台にした作品であり、列車そのものを舞台、劇場にした作品でもある。貸し切り車両を走らせ、その車内で公演する。役者も観客も同じ車両に乗り合わせるから臨場感があり、映画の4DXよりも強烈に世界観を共有できる。自分が観客でありつつ、物語のエキストラとして参加している感覚もある。

 スリーナインシリーズは04年の『エノデン・スリーナイン』から始まった。しかしこの作品はまだ舞台演劇だった。車内を舞台にした作品は08年の『銚電スリーナイン』から。その後、09年も銚子電鉄、14年は樽見鉄道、15年は高松琴平電気鉄道とひたちなか海浜鉄道、16年にひたちなか海浜鉄道で公演してきた。車内演劇スタイルは10周年。本作の舞台には第1作の銚子電鉄を選んだ。

 主人公は公演する鉄道沿線にゆかりのある人物という設定で、せりふには沿線の人々にはおなじみの土地や食べ物などの名前が出てくる。濃密なローカル感で、極め付きは沿線の町歩き。登場人物やスタッフによって、登場人物が暮らす街を案内してもらえる。その知識があれば、地元の人以外でも物語に没入できる。

 公演する地域に密着し、ダイヤに合わせた演出が行われる。登場人物が途中の駅で降りて消えたり、新たに駅から乗ってきたりする。役者がダイヤグラムに沿って動くという面白さ。樽見鉄道ではトンネル内の闇を使った演出もあったという。

 「ローカル線演劇」の面白さにハマったら、各地の公演を追いかけたくなる。ファン待望の銚子電鉄公演がいまから楽しみだ。

 今回は映画を3作品、演劇を2作品紹介した。これだけでも18年は鉄道エンターテインメントが豊作の予感。昨年紹介した『エンジニール 鉄道に挑んだ男たち』などコミック作品もあるし、テレビドラマでは1月15日スタートのフジテレビ『海月姫』で、鉄道ファンの松井玲奈さんが鉄子役で出演するとのこと。18年も楽しい年になりそうだ。

(杉山淳一)



『かぞくいろ』公式サイトより

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