集落維持+活性化 移住者も 農泊で空き家解消 景観維持を徹底住民らもてなし 年800人宿泊 兵庫県篠山市丸山集落 – 日本農業新聞



 農村の空き家を宿泊施設として活用し、集落の維持と活性化につなげる動きが出てきた。観光名所でなくても、農村風景や古民家のたたずまい、地域に根付いた食文化や風習などが来訪者を引き寄せる。集落側は、空き家の解消だけでなく、新たな仕事と生きがいの創出、さらには移住者の増加など相乗効果につながっている。

 中国山地の真ん中、兵庫県篠山市の山あいに位置する丸山集落。小さな谷筋に築150年を超すかやぶき屋根の古民家が点在し、集落を流れる小川に魚が群れる。傾斜地の田畑はきちんと耕作され、絵に描いたような「農村の原風景」が広がっている。

 しかし、「ここは限界集落どころか消滅寸前だった」と、住民の佐古田直實さん(74)は語る。集落の12戸のうち7戸が空き家で、寂れた集落に人影はない。荒れた田畑が目立ち、泥棒に荒らされた空き家もあった。「都会に出た人は帰ってこない。みんな下を向いていた」

 そんな集落を再生したのが、空き家を使った民泊だ。地元の一般社団法人・ノオトが旗を振り、空き家の改修と宿泊施設としての活用を住民に提案。首都圏や大阪から空き家の家主も集めて話し合いを重ね2009年、住民を挙げて運営する「農泊」に乗り出した。

 古民家の宿「集落丸山」は、改修した空き家2戸をそれぞれ宿として1棟貸しする。集落内の小屋に“フロント”を構え、住民が客を宿へ案内する。1泊朝食付きで、住民女性らが宿で、客の前で地元の朝ご飯を作ってもてなす。

 事業開始から8年。インターネットや口コミなどで評判が広がり、年間約800人が宿泊に訪れるようになった。現在、宿の稼働率は3割程度と「維持運営するには十分」(佐古田さん)な収益を得られ、集落の新たな仕事として定着した。

 最近は集落に若者が移住し、レストランとシェアハウスを運営する。特産の黒大豆でオーナー制を始め、都市住民との交流も生まれた。集落に今、荒れた田畑は見当たらない。佐古田さんは「人が出入りするのがうれしい。住民は皆、期待を裏切らないよう景観の維持に余念がない」と晴れやかだ。

 

管理不十分300万戸 地域の“宝”見極め鍵  

 総務省による13年度の住宅調査によると、空き家は全国で820万戸あり、全住宅に占める空き家率は13・5%に上る。このうち318万戸が長期不在などで放置され、「管理が不十分になりがち」(国土交通省)な状況にある。33年には空き家率が30%強に倍増するとの民間予測もあり、対策が急務となっている。

 空き家の増加により防災や防犯性の低下、ごみの不法投棄や景観悪化などの問題が各地で起きる状況を受け、政府は空き家対策を法制化。自治体が15年から、実態調査や放置できない空き家の行政措置、空き家の活用などに乗り出している。

 農村の空き家活用で、政府は「農泊」を有力な方策の一つとして位置付ける。観光立国や地方創生など各分野から強力に後押しし、農泊をビジネスとして成り立たせる地域を20年までに500カ所つくる目標を掲げる。

 農水省は、農泊推進に向け「農山漁村の所得向上」を主眼に置いた事業を進める。今年度の新規事業では、伝統料理や農業体験の提供、古民家の再生や美しい景観づくりなど農村の魅力を生み出して宿泊客を呼び込もうとする地域を支援する。既に全国200地域が動きだしているという。

 同省は「地域の“宝”は何なのか、観光客の目線で特色を打ち出すことが不可欠」(都市農村交流課)と指摘。農泊による集客は、農家だけでなく周囲の飲食店や運輸業、土産物店など幅広い経済効果をもたらすと期待する。(福井達之)




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