上司と部下で「ありがとう」が言い合える組織に – CAMPANELLA [カンパネラ]



「組織の限界は上司がつくっている。いわば上司の限界が組織の限界だ」。こう断言するのは、ビジネスコーチとして多数の著書を持ち、国内各地でコミュニケーションに関する各種のセミナーやワークショップを展開している岸英光氏。岸氏は「だからこそ、部下とは上下関係ではなく、パートナーになるべきだ」と言葉を継ぐ。自分と組織の限界を打破したい次世代リーダーに向けて、新しい視点を提供する。(後編)

(前編はこちら

──大手企業における不祥事を見ていると、組織のトップに大事な情報が届いておらず、現場でもみ消したことが発端となっているケースが多々あります。これは、まさに上司と部下のパートナーシップが欠如している典型例ではないでしょうか。上司の顔色、あるいは上司の自分に対する評価を気にして、事故の実態やネガティブな内容だけど大事な情報を部下たちの間でとどめてしまう。パートナーシップがあれば、そうしたゆがんだ関係性は修正されるように思うのですが。

岸:インテンショナルメッセージ(前編を参照)を使っていくと、相手との間にパートナーシップが醸成できてきます。

私は男女の関係と同じだと言いましたが、あらためてパートナーシップを申し込むというのは有効です。「ぜひ部署のために、何でも言いたいことを言おうよ」と。

夫婦であれば、お互いに成長し、幸せな未来を実現するために、言いたいことや言うべきことをきちんと言い合える関係が良好な夫婦関係だと言えます。言いたいことや言うべきことを言っても相手を傷つけるわけではないし、自分も傷つかない。だから関係性が壊れない。それが本当のパートナーシップです。

岸 英光(きし・ひでみつ)氏

コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)統括責任者
岸事務所 代表/エグゼクティブコーチ、日経BP「課長塾」総合講座メイン講師
東京都出身。大学卒業後、企業にて企画・営業・開発を手がけると同時に、最新の各種コミュニケーション・能力開発などのトレーニングに参加。自らがコーチされることを通して日本人に即したプログラムをオリジナルで構築。その後、人間関係や能力開発に関する様々な分野のセミナー・講演・研修・執筆活動を展開。数多くの企業で顧問(コーチ)として活動すると同時に、各地の学校、教員研修、病院、福祉施設、自治体、官公庁などでの研修・講演、一般対象の連続講座の全国主要都市での展開など、機能するコミュニケーションを日本の文化にするべく、精力的に活動中。『コーチング/パラダイムシフト』の第一人者として高い評価を受け、テレビ・雑誌・新聞でも取り上げられる。講演・講座・研修は、全国で年400回以上。主著として、『エンパワーメントコミュニケーション』(あさ出版)、『弱音を吐いていいんだよ』(講談社)、『悩んでばかりの自分から抜け出す方法』(日本実業出版社)、『ほめない子育てで子どもは伸びる』(小学館)など、著書・監修書多数。

パートナーとの間に確保すべき「コミュニケーションライン」

岸:私の講座でコミュニケーションを教えている人たちには、私は「結婚したらコミュニケーションラインをしっかり確保し続けなさい」とアドバイスしているんです。半分冗談ですが、「結婚してしばらくするとたいがい破綻し始めるからね」と添えて。

男性の側からコミュニケーションラインを確保する時のインテンショナルメッセージは、例えばこんな感じですね。

「僕は君と幸せな家庭をつくっていきたいんだ。だからお互い、相手に対して『これはおかしいな、変えてほしいな』と感じたことをすぐ、遠慮なく言うし、相手の言うことをきちんと聴くという約束をしたい(背景・意図・ビジョン)」

「僕は、君から言われたことが二人のためになるものなら、訂正するし、僕もこれは二人のために言うべきだと感じたことは、素直に言うよ。でもそれは二人の関係を良くしたいからであって、決してお互いを傷付けるものではないんだ。だから言い出したというそのことだけで関係を切ることはしない(具体的行動)」

「そうすることでお互いが何でも話し合えて、理解を深めて、どちらかが無理したりしないで、居心地の良い家庭をつくれたら(具体的影響)、本当に幸せだしうれしいよ(偽らざる気持ち)」

こんな具合です。

──改めて言ったり言われたりすることは少ないかもしれませんね。でもこう宣言しておくと、いわゆる仮面夫婦になることが防げるかもしれません。

岸:「そもそも二人はどうしたかったのか」という立ち位置に戻れるようにコミュニケーションラインを確保しておくと、パートナーシップが常に“再創造”できるからいいんです。幸せな家庭をつくるというのが共通の目的だよね、というところに戻れるからです。それに、人はすぐ、意図を忘れてしまうものなので。

ネガティブ情報が歓迎される環境をつくる

岸:パートナーシップとは本来、言いたいことを言っても壊れないものなのですが、折々で宣言しておかないとやはり誤解が生じがちで、そこから関係が崩れていく。これは男女の関係はもちろん、上司と部下も同じことと言えます。

上司から部下に対してコミュニケーションラインを確保しておけば、組織内のネガティブ情報が耳に入りやすくなる。部下の遠慮のない声で耳が痛いかもしれないけれども、上司はその情報で組織の全体像が見え、マネジメントしやすくなりますから。

言ってしまえば当たり前のことなんですが、ついつい、これができないというケースが多いんです。だから時々にでも「そもそもどうしたいんだっけ」という地点に立ち戻れるといい。

──上司から部下へのコミュニケーションラインを確保する時のインテンショナルメッセージはどんな雰囲気になりますか。

岸:部下が気にするのはやはり自分の評価です。ですからインテンショナルメッセージの中で「組織のために言うべきとなれば、何でも言ってほしい。言ったことであなたの評価を落としたりはしないから」と明確に言うべきでしょう。

「何か否定的なことを言ったら切られる」という恐怖があると、部下は安全を確保するために言いません。だからまずこちらから相手に宣言してまずは信頼してもらう。そして部下から信用を得るために、上司が実際に行動で示す必要があります。これは上司の責任です。

ちなみに信頼と信用はかなり違います。信頼とは「する側」が自由に決めるものです。例えば親が子供に教育する際、子供を信頼しているから教育するわけですね。それで結果が出るかどうかの保証や証明がなくても、「この子はきちんとやる子だ」「結果を出す子だ」と扱ってやり続ける。言い換えれば、信頼はリスクがあるが相手を育てる性質のものと言えます。

一方で信用は「信用取引」とか「信用保証」と使われるように、「される側」の条件や実績で決まる関係です。例えば信用金庫は条件が揃っていたらお金を貸すわけですよね。

ですから上司は最初、部下にまず信頼してもらい、次に実績を積んで信用してもらうわけです。




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