移民の経済効果の数値化に政治的な介入か ノルウェーの統計局と財務省が衝突 – Yahoo!ニュース 個人



11月、ノルウェーで連日トップニュースとなっている話題が、シーヴ・イェンセン財務大臣と、統計局SSB(元)代表のクリスティーネ・メイェール氏という2人の女性の対立だ。

独立機関とされる統計局SSBは、国に関する統計の企画・作成をおこなっている。独立機関でありながら、政府機関でもあり、オーナーは財務省となる。

移民・難民に厳しい政策で知られる財務大臣(進歩党)。統計局は、デジタル化や統計のさらなる国際的な場での発表を目指して、大規模な組織改革を国会から指示されていた。

今、財務省が移民の数値化を求めて、統計局の人事異動に「政治的に介入しようとした」のではないかと疑問視されている。

必ずしも全員が納税せず、福祉制度に甘える移民や難民の受け入れは国の未来を脅かすと強調してきた進歩党。同党は、(日本人移民を含む)移民の影響のさらなる数値化を求めてきたが、統計局のメイェール元代表は否定的な態度を示していた。

メイェール氏は、元・中道右派「保守党」の政治家でありながら、移民政策においてはリベラルであることが公に知られていた。

統計局元代表メイェール氏 Photo: SSB
統計局元代表メイェール氏 Photo: SSB

移民の社会への影響を数値化することに懐疑的で、「移民のためならデモにも参加する」という政治的な姿勢をもっていた。

世論を分裂させやすい移民政策において、明白な政治的思考をもつ人物が、統計局のトップでいることには、以前から右派・左派問わず国内で疑問の声があった。統計局が出す数字をどう解釈・議論するかは、政治家や国民が決めることでもある。

その代表の存在に進歩党がイライラしていたことも知られていた。

社内の人事異動はよくあることだが、統計局の組織再編成計画は、異様ともいえるレベルで大きな注目を集めている。

組織再編成の在り方と、移民の数値化は、別々の議論だ。

25人の研究者が人事異動となることにおいては、研究者や社員からも抵抗の声があり、社会に届けるべき研究の質が下がるのではないかということも心配されていた。

先週から、この議論はさらに大きな注目を浴びる。

移民研究の分野において代表的な存在だったアーリン・ホルモイ研究者も人事異動の対象だったからだ。

ホルモイ研究者の異動をとめようとしているのではないかと噂される財務大臣と、メイェール代表の対立構造は、クライマックスを迎える。

財務大臣は記者会見で「メイェール氏は信頼できない」と、事実上のクビ宣言をした。

「信頼」という言葉にノルウェー人は強いこだわりがある。大臣に「信頼できない」と言われた場合は、統計局のトップを続けることはほぼ不可能だ。

今回の騒動で、統計局の在り方や、同局の出す移民における数字は、公正で信頼できるものなのかという疑問も出ている。市民からの統計局に対する信頼度も落ちることを政治家らは懸念。

12日、メイェール氏は統計局のトップを辞任した。

辞任確定の前日には、メディアに「メイェール代表は辞任する」という速報がでたが、本人は否定していた。自分にストレスを与えるために「財務省側がリークした圧力だ」と指摘。財務大臣と財務省から移民研究において以前から圧力があり、今回の騒動の原因はオーナー(つまり財務省)にあると批判した。

その後、同氏は財務省に口止めされそうになったこと、財務省が移民研究者であるホルモイ氏を「特別扱い」するように電話してきたこと、ホルモイ氏に研究の質には一部疑いがありながらも、移民レポートを承認しなければいけなかったことなどを現地メディアに暴露。

一方で、イェンセン財務大臣は、移民の数値化だけが原因であることや政治的介入を否定している。

いまだに全体像がつかめず、両者の言い分がすれ違っていることから、暴露ドラマはまだまだ続きそうだ。

統計局の組織改革における議論は別に、財務省が政治的な介入を本当にしなかったどうか検証する必要があるとして、野党は国会での議論を求めている。

Photo&Text: Asaki Abumi




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