【遊技産業の視点 Weekly View】 – SankeiBiz



 □シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史

 ■韓国・束草市の事例からみるインバウンド

 韓国の北東部、江原道の日本海側に束草市という人口約8万5000人の小さな町がある。江原道といえば、もうすぐ山間部の平昌郡で冬季オリンピックが開催されるため国際的に注目されつつあるが、束草市はオリンピックの地から60キロほど離れた場所にあり、まさに“陸の孤島”を体現するかのような町だった。だが近年、ソウルからの劇的な交通アクセス向上に伴い観光客が増加。2016年には単体の観光地として年間の観光客数が1400万人を突破し、総数では済州島(約1500万人)に及ばなかったものの、内国人観光客数では国内観光地のトップに躍り出た。また外国人観光客も15年と比較して約30%増加するなか、東南アジアからの観光客が増えているという。

 そんな束草市の魅力だが、「韓国一美しい山と、韓国一美しい海」に集約される。しかし、同地にはかつてカジノが存在していた。海岸から西に5キロほどの距離にある雪岳山国立公園内に『ホテル雪岳パーク』という三つ星ホテルがあり、1980年のホテル開業と同時に江原道初の外国人専用カジノ『雪岳パークホテルカジノ』がオープンした。カジノは660平方メートルの規模でスロットマシン40台など8種類57台の小規模なものであったが、2012年初頭に江原道平昌郡の『アルペンシアホリデーインホテル』に移転した。一方、束草市ではインバウンドの一環として韓国内では初の試みとなるムスリム(イスラム教徒)観光客向けのパンフレットを作成するなど、ASEAN諸国からの集客に注力。日本でもインバウンド対策としてハラル担保の飲食店などが東京を中心に増えてはいるが、まだまだ一般的ではない。ただ、東南アジアのイスラム教大国は中近東の国々と比べて相対的に戒律は緩いため、彼らの足は比較的海外へは向きやすい。またASEAN諸国の40%がムスリムであるなか、インドネシアとマレーシアだけでもその人口は2億5000万人を超える。

 インバウンド効果をカジノ重視のIRを軸に考えると、賭博ご法度のムスリムは対象になりにくい。国策としてインバウンドに驀進(ばくしん)するのであれば、その集客対策の議論はもう少し盛り上がってもよさそうだ。

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【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆など手掛ける。




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